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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)1237号 判決 1951年2月23日

主文

原判決を破毀する。

本件を名古屋高等裁判所に差戻す。

理由

名古屋高等検察庁金沢支部長検事名越亮一の上告趣意について。

原判決が本件公訴事実につき無罪の言渡をした理由は有限責任石川県勤労者生活協同購買利用組合連合会(略称生協連)は消費者が生活必需物質を自己のため協同購入し之を自己のため配分する団体であり、団体員以外の者に転売して利を営むことを目的とするものにあらざるは勿論被告人両名も亦右団体の役員としてその事務に従事し報酬として給料を受くるのみで本件買受行為において利を営んだものではない。従って被告人両名の行為は物価統制令第十一条但書違反としての犯罪構成要件を充たさざるものであるというのである。しかし同令第一一条によればたとえ営利を目的として契約したものでない場合でも当該契約を為すことが自己の義務に属するものについてはなお同令第三条違反の罪を構成するものであることは同条但書の規定によって極めて明白であるから本件において被告人両名の所為が営利を目的としたものでないという理由から直ちに同令第一条但書の自己の業務に属するものでないと論結することはできない訳である。それゆえ原審は単に被告人両名の所為が営利を目的とするものでないと判断しただけでは被告人等を無罪とすることはできないのであって、さらに進んで本件契約をすることが右生協連の業務に属するものであるや否や、また被告人両名が右生協連の機関として右生協連の取引として右契約を締結したかどうかの点について審理判断をすることを要するものといわなければならない。然らば原判決が前記のような理由によって無罪を言渡したのは審理不尽理由不備の違法あるものというべく論旨は理由がある。

よって刑訴施行法二条旧刑訴四四七条同四四八条ノ二により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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